雑誌の休廃刊が相次いでいます。『月刊現代』『読売ウイークリー』『論座』などに続いて、先月は『エスクァイア日本版』と『諸君!』が、さらに今月は『BRIO』が最終号となります。休廃刊の理由には、インターネットの台頭、携帯の普及、消費全体の低迷、不況による企業広告の撤退などがあげられます。しかし、高橋さんは「出版販売額の過半は雑誌が占める。その不振が極まれば、とかく雑誌に支えられる格好で活動を続けてきた出版界そのものが、お手上げになりかねない。雑誌がダメになれば、本もダメになる。活字文化そのものがおかしくなる。それを避けるためにも、まず、雑誌を甦らせたい」と力説します。 その思いから今年2月に上梓したのが、『雑誌よ、甦れ 〜“情報津波時代”のジャーナリズム〜』(晶文社)です。この本の前書きに高橋さんは次のように書いていらっしゃいます。
―― 雑誌や読者を取り巻く環境はどう変わったのか、インターネットなどのデジタル情報が津波のように押し寄せる中にあって、専門深掘り型の情報を提供し「安らぎ」や「お墨付き」をも与えることができる雑誌が、その特性を踏まえて新たな役割を担えないのか、探ってみたい。世の中はまた、グローバル化につれ、「ゲゼル化」、つまり利益社会(ゲゼルシャフト)化が急速に進行中だ。広がり深まりゆくゲゼル化の時代にあって、雑誌の持ち味は活かせないのか、新たな地平は広がっていないのか、当たってみたい。筆者はジャーナリズムの分野でこれまで、新聞を振り出しに、電子メディア・雑誌・出版の仕事に携わってきた。既存の活字メディア、新興のデジタルメディア、それぞれにささやかながら土地勘がある。そのような立場からデジタル時代の雑誌について自分なりの見方や考えをまとめ、明らかにするのは、ここに身を置いた者のひとつの務めではないか、とも思った。「一宿一飯の」である。 ――
この『雑誌よ、甦れ』は、メディアにおける教科書的存在になりつつあります。
高橋文夫さんは1938年生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。ニューヨーク特派員、編集委員、産業情報部長、データバンク局次長を経て、日経BP社『日経ビジネス』局長・発行人、専務出版・開発担当、日経BP出版センター代表取締役社長を歴任、05年から日経BP社参与を務めていらっしゃいます。日本外国特派員協会・日本記者クラブ会員。I-Mediaでは7年前に講演していただいて以来のお仲間でもありますので、よそでは聞けない“身内だけの話”も期待できますよ。 |